「みーつけた、センセイのクソ旦那」
病院で気味の悪い話しかけ方をしてくる奴がいると思ったらコイツか。
センセイって、今はもうお前のセンセイじゃないだろ。
自分の方が僕の妻の主治医の癖に。
そういう、僕の知らない世界のキーワードを持ち込んで来るところも性格が悪い。
本当に嫌いだ、こんなクソガキ。
「最近顔色悪いデスね、クソ旦那さん。センセイに捨てられちゃった?」
…妻が自立しようと、新しい事にチャレンジしているのは知っている。
それで僕のお金を使うのは構わない。
むしろ使わせて欲しいくらいだ。
自立出来るくらい経済力があって、それでも必要とされる人間になりたい。
僕はそれを求めているのに。
「クソ旦那さんさ、病院行った方が良いんじゃない?俺、紹介しようか」
…は?
僕は病気なんかじゃない。
何を言っているんだコイツは。
「ソレ、いつからなの?」
…それってなんだよ。
「えー、全部言わせんの?お・ん・な・あ・そ・び」
ヒソヒソとした声で囁く。
…なんでコイツが知っているんだ!?
僕は誰にも話していないのに。
「あっはっはー、図星?ねぇ、クソ旦那さん。俺が言うのもなんだけど、ソレ、病気だと思うよ」
…そんなの僕だって分かっている。
けれど、どうやって治すんだ?
薬でもあるのか?
女遊びの治療法なんて聞いた事もない。
強い意思を持てば、自分でも止められるはずだ。
「…無理だと思うよ。そう思うからどんどんドツボにハマって。最終的には取り返しのつかないことになるんだよ。本当は分かってるよね?クソ旦那さん」
真剣な顔をして言うなよ。
お前になんか助けられたくないんだよ。
僕は平気なはずなんだ、自分で解決出来るはずなんだよ。
なんで上手くいかないんだ。
いつからなんだろう。
…ごちゃごちゃの思考を整理する。
潰れそうな気持ちを抱えて、
真っ直ぐにふざけた医者の目を見てみる。
ヘラヘラした口元とは裏腹に。
真剣な眼差しを感じて、
思わず目を逸らす。
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