ずっとセンセイが好きだった。
たぶん初恋。
家庭教師として来た時は綺麗だなって思った。
いわゆる絶世の美女!というわけではないけれど。
化粧っけは少ないけれど全体的に整っている顔立ち。
変に染めたり巻いたりせずに、自然な感じの長い髪。
シャープペンを持つ手元は細長い指が綺麗だったし、
何よりも目が好きだった。
目というか、眼球が。
言っておくけれど俺に変な性癖は無い。
医学部志望だから人体に興味はあるけれど、
眼球が好きと思ったのはセンセイだけだ。
年齢の割にはいろいろなことを経験してそうな、悟ったような目。
特段苦労してきたような人生には思えないけれど、
俺とは見えている世界が違うような、重みのある言葉選びや目線、そして説得力。
そこら辺のチャラチャラした制服を短くした同級生と大違いだ。
俺はすぐにその眼球に囚われる。
私みたいな女の子なんて、大学に入ったらたくさんいるわよ。
一度センセイの見た目を褒めた時に、クスッと笑いながら言われた。
世間知らずのお子ちゃまだと言われたみたいでムッとして、それ以上は何も言わなかったけれど。
結局大学に入っても研修医になっても、
センセイのような女性に出会うことは無かった。
俺にとってセンセイは、ずっと憧れの人。
センセイは俺なんか眼中に無くて。
就職して出会った歳上男に恋をしているみたいだった。
恋をしたセンセイの眼球はキラキラと輝いていて。
それを綺麗だな、と思ってしまう自分と、嫉妬してしまう自分に折り合いが付かずに。
結局自分でセンセイから離れた。
本当は医学部に入学したら想いを伝えようかと思っていたけれど。
たぶん今の俺にはセンセイの眼球を輝かせるだけの気概が無い。
早くもっといろいろ経験したかった。
社会的地位も欲しかった。
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