復讐計画書 あの子と私1

ずっとセンセイが好きだった。
たぶん初恋。

家庭教師として来た時は綺麗だなって思った。
いわゆる絶世の美女!というわけではないけれど。
化粧っけは少ないけれど全体的に整っている顔立ち。
変に染めたり巻いたりせずに、自然な感じの長い髪。
シャープペンを持つ手元は細長い指が綺麗だったし、
何よりも目が好きだった。
目というか、眼球が。

言っておくけれど俺に変な性癖は無い。
医学部志望だから人体に興味はあるけれど、
眼球が好きと思ったのはセンセイだけだ。
年齢の割にはいろいろなことを経験してそうな、悟ったような目。
特段苦労してきたような人生には思えないけれど、
俺とは見えている世界が違うような、重みのある言葉選びや目線、そして説得力。
そこら辺のチャラチャラした制服を短くした同級生と大違いだ。
俺はすぐにその眼球に囚われる。

私みたいな女の子なんて、大学に入ったらたくさんいるわよ。
一度センセイの見た目を褒めた時に、クスッと笑いながら言われた。
世間知らずのお子ちゃまだと言われたみたいでムッとして、それ以上は何も言わなかったけれど。
結局大学に入っても研修医になっても、
センセイのような女性に出会うことは無かった。
俺にとってセンセイは、ずっと憧れの人。

センセイは俺なんか眼中に無くて。
就職して出会った歳上男に恋をしているみたいだった。
恋をしたセンセイの眼球はキラキラと輝いていて。
それを綺麗だな、と思ってしまう自分と、嫉妬してしまう自分に折り合いが付かずに。
結局自分でセンセイから離れた。
本当は医学部に入学したら想いを伝えようかと思っていたけれど。
たぶん今の俺にはセンセイの眼球を輝かせるだけの気概が無い。
早くもっといろいろ経験したかった。
社会的地位も欲しかった。

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