復讐計画書 嵐2

私の病室は個室に移されていて、右腕には包帯、左腕には点滴が刺さっていた。
看護師さんが言うには、しばらく個室に警備員を付けてくれるらしい。
あの女が私とどういう関係なのか、病院の人たちが知っているかはわからないけれど。
後日警察の事情聴取があるという事なので、それなりの大事にはなるのだろう。
患者が傷付けられたとなると病院側としても黙っていられないだろうし。
ともすればニュースに出るような案件だろうし。

私の意識が戻ったので、主治医の先生が確認に来た。
じっと私を見つめてくるので不思議に思ったけれど。
まぁ私の顔色を確認しているのかな?とそこまで深くは考えなかった。
あの女との関係性について病院の人から聞かれる事はなく。
あの出来事が嘘のように静かで平穏な病室だった。

利き腕に深い傷が出来てしまったので、どうにも日常生活がやり辛い。
幸い、鋭い刃物での傷だったので傷口が綺麗で。
すぐに縫合したので跡は目立たなくなるそうだ。
夫は一連の出来事の際に外で仕事の電話をしていて。
病院から緊急連絡が入って慌てて駆け戻って来た。
その頃にはあの女は既に捕まっていて鉢合わせてはいないみたいだけど。
まずは夫から、ということで今事情聴取を受けている。
民事不介入だろうから浮気のことは追及されないと思うけれど。
正直この一件を、あの女を叩き潰すために利用したいと思っている。
思えば夫と結婚してからずっと、私は自分に清楚で貞淑な妻の像を勝手に押し付けていた気がする。
本当の私はもっとだらしない部分もあるし。
醜い気持ちや怠惰な思いもあるけれど。
夫に愛されたくて、夫が求めているであろう妻像を。
自分自身に投影して、自分を縛り付けていた。
私を型にはめようとしていたのは他でもない、私自身だ。

人に好かれようと思う気持ちが間違っているとは思わない。
けれど、人に好かれるために自分を押し殺すのは本当に幸せなのかな?
私が夫に見せていた姿は嘘ではないけれど。
きっと本当でもない、半分捏造した私なんだ。
夫は間違いを犯したけれど、私も夫とは本当の意味で向き合ってなかった。
だからまず、あの女を叩き潰す。
それが自分と、そして夫と向き合う第一歩。

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