復讐計画書 変化3

気付いたら白い壁に囲まれた部屋にいて。
隣には夫が座っていた。
久しぶりに見た夫の顔は頬がこけていて。
なんだか白髪が増えておじさんになった感じがした。
子どもがいないからかな?
私たちはずっと恋人気分が抜けなくて。
もういい年をした大人なのにどこか浮世離れしたところがあったように思う。
丸顔の私はシュッとした夫の顔立ちが羨ましかったけれど。
鏡をよく見ると私の丸顔もしぼんでいて。
クマも酷くて唇も乾燥していて。
そりゃあ主治医も神妙な顔になるなってくらいの顔色だった。
結局私はこのまま入院して。
後日受けるはずの検査をすべて受けてしまうことにした。
仕事のこととか。
夫のこととか。
あの女のこととか。
考えることはたくさんあるけれど。
もう限界なんだなと悟ると、案外腹が据わってきた。
…ちゃんと考えよう。逃げないで。
やっとそう思えるまで、結構かかっちゃったな。

耳鼻咽喉科の検査は超音波から。
大きな病気を疑う病変があったので、検査のための手術をすることになった。
細胞というものは結局、取ってみないとわからないものらしい。
文明が発達してこんなにたくさんの機械に入ったのに。
最後は原始的な「取り出してよく観察する」という作業が必要になるなんて。
何故か面白くなった。
手術に狼狽する夫を直近で見たからかな?

…貴方が苦しい思いをすると、
私の溜飲が下がる。

そう正直に伝えてみたときに。
歪んだ表情をする夫を見て。
笑っちゃった。
久しぶりに。

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