へー、すごい不思議。
記憶喪失ってこんな簡単にできあがるんだ。
私との思い出も何もかも。
あの子に取られちゃった。
悲しいな。
確かに似ているけどさ、
双子と言っても違う部分だってたくさんあるでしょ?
あの人はもう亡くなっているのに。
それを乗り越えて私と出会ったのに。
貴方の記憶はあの頃に戻ってしまって、
そしてあの頃はあの人が婚約者で。
でもあの人はもうこの世にいないから、
あの子を最愛の人だと思い込んでいる。
どんなに説明しても信じてもらえなくて、
むしろ私に不信感。
そりゃそうだよね、愛した人がこの世にいないって言われて、
でも目の前にはよく似た妹がいて。
その妹がずっと彼のことを想っていたら、
私の入る余地なんて無いか。
だって私は彼の記憶に存在しない異物だもんね。
二人で決めた衣装も花も、
全部あの子に取られちゃった。
周囲もみんな彼の記憶の味方で、
もうあんなに苦しんだ彼になって欲しく無いんだって。
そりゃそうだよね、
愛していれば。
優しい手のひらも、私には触れられない。
包み込んでくれた腕に触れることもできなくなって、
私を呼ぶ声も、今は他人行儀。
私がいなくなればいいのかな?
みんなそれを望んでる?
あんなに祝福してくれたのに。
本当は私はただの代わりだったのかな?
私を愛していたんじゃなくて、
愛した彼女の邪魔をしなかったから選ばれたのかな?
私を見てくれたのではなくて、
ただ条件が良かっただけ?
…考えても仕方ない。
問いかける相手はいないのだから。
ただ私は黙ってここから去って。
そして全てを忘れることを求められているんだよね。
残酷だね、愛って。
さよなら、愛しい人。
不幸になれとは思わない。
けれど、ずっと心に燻る違和感を持ち続ければいいと思う。
なんとなく違う感じとか、
けれど合っているような、よくわからないモヤモヤを。
それを解消しないのも愛だし、
伝えるのも愛だし。
だけど私はもう貴方に。
向き合う程の力は残ってないよ。
泣きすぎて。
いいなぁ、記憶喪失って。
ズルいな。
愛してる。
だからサヨナラ。
貴方の幸せを願っているよ。
嘘つきに囲まれてそうなれるかは別として。
コメント