復讐計画書 自立4

「じゃあもう一回大学に行けばいいじゃん。センセイ頭は悪くないんだしさ、頑張れば行けるんじゃない?」

この子は何でも簡単に言う。
そりゃあアナタくらい頭が良くて実家がお金持ちならそういう道もあるだろうけれど。
私は大学に入るとなったら必死で勉強し直さなきゃいけないし、
高校時代に一回だけ取った事がある赤点は化学だった。
これは茨の道だと思う…。
それに、大学費用にその間の生活費だってどうするのよ?
私は自立したいと思っているのに、
お金を使う計画ばっかり提案しないで。

「センセイはさ、何で全部頭で考えるだけで可能性を否定するの?俺には何でもチャレンジしろとか言っといてさ」

…痛いところを突かれた。
人を応援するのは好きだ。
その人の可能性を考えたり、小さなキーワードからその後を想像したりして、やる気を出させるのは得意だった。
私が家庭教師としてある程度の収入を得られたのは、勉強を教える能力というよりはやる気にさせる能力を買われたからかもしれない。
だけど、自分に対してはその能力はまったく発揮出来なくて。
石橋を叩いて叩いて結局渡れなくて。
自分の周りに勝手に高い壁を積み上げて、登れないと諦める。
そうして誰かに頼ろうとする、そんな人生だったかもしれない。
自覚したことはなかったけれど。

「センセイはさ、変わりたいんでしょ?じゃあまず一歩踏み出してみたら?大失敗しなきゃいいじゃん。離婚する前に、チャレンジしなよ。それも立派な復讐だよ」

夫のお金をアテにして新しい人生にチャレンジする。
不貞行為を立証出来ないから慰謝料は貰えない。
だけど、真実がどうであれ。
私が傷付いたり苦しんだりした事は事実だ。
確かに!
慰謝料は自分で作れば良いのだ。
夫のスネをかじりまくって、たくさん挑戦しよう。
私が自立するために、夫を利用しよう。
夫を許せない、信用出来ないと思う悶々とした気持ちをこのまま押さえつけるよりも。
苦しんだ分この人を踏み台にしてみせるという活力に変えるよう努力しよう。

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