復讐計画書 自立2

「じゃあさ、医療事務なんて良いんじゃない?俺、コネあるよ」

火遊びはしない。
夫から自立できるようになるまで離婚はしない。
夫の庇護下で自立への道を歩むことが、今の私ができる最大限の復讐だと思う。
そう伝えたらコレ。
医療事務なんて、まったく経験がないのに…。

「私は今と同業種で探しているんだけど…。それに、この歳で未経験に転職なんて…」
自立したいと言いつつ、まったくの異業種には尻込みをする。
ぬくぬくと桐箱の中で生活してきた癖が、すぐには抜けないらしい。

「医療事務は資格職だからさ、より高位の資格を取ればそれだけ職業の幅が広がるんだよ」
「病院からクリニックまで幅広い働き方があるし」
「自治体が補助金を出す、職業訓練にも認定されているんだよ!お金を貰って勉強できるなんて、ラッキーじゃない?」

初めは自分の得意分野に私を引き入れたいだけかと思ったけれど、
話を聞いているうちに悪くないかなと思ってきた。
もちろん、やるからにはしっかり勉強して、コネに頼るつもりはないけれど。
働き方も多岐に渡るみたいだし、経験を積めばある程度のお給料も保証されそう。
残業などのハードルもあるみたいだけれど、子どものいない私はある程度時間に融通が効くし。
新卒ではなくてパートから始めた人も多いみたいだから、今からチャレンジすれば長く働けるかも?

仕事をすることは嫌いではない。
どちらかというとインドア派で予定がないと外出をしないタイプの私は。
夫と一緒にいるようになってだいぶアクティブに行動するようになったけれど。
家に引きこもっていても苦にならない代わりに、少し性格が内向的になり過ぎてしまうことが悩みの種だった。
その点仕事は良い。
強制的に身支度をして外出するし、外に出てしまえばそれなりにキビキビ行動することもできる。
人生にハリを持たせるためにも働けるうちは働きたいと思っていたけれど。
今の私の仕事は責任が伴わない代わりに給料が安い。
だから安心して入院生活を送れるわけなんだけれど。
自分自身にキャリアを付けたい、と思った今。
そういう責任のある仕事にチャレンジしてみるのも良いかもしれない。

「センセイ、楽しそうだね?」

…ちょっと顔がニヤけてたみたい。
だけど、変だけど。
今ちょっと楽しい。
久しぶりに。

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