あの女はミスが多くて。
そしてミスを隠すために、しょうもない嘘を吐くことで有名だった。
無断欠勤はよくしていたし、
不注意で交通事故も起こしていた。
完全に地雷女だったのに、
良くも悪くも我関せずの業界が功を奏したのか。
信用はないけれど、無視もされない。
そんな微妙な立ち位置。
貴方とあの女が仕事をすることになった時。
嫌だな、とは思ったけれど。
まぁどうせイベントが終わるまでの話だし。
あの女は貴方のタイプではないからと思って、口出しはしなかった。
仕事の打ち合わせで貴方とあの女が会った時に。
私との馴れ初めを聞かれたって言っていたよね。
世間話で話した流れで、
私たちの家庭の約束の話もしたって言ってたよね。
李下に冠を正さずじゃないけれど、
疑われるようなことはしないでおこうって。
業界的にも噂が命取りだから。
誤解されるような行動は慎もうって。
そう約束して結婚したって。
そういう話をしていたのに。
それでも貴方に迫って来るってことは。
あの女から私に対する、
宣戦布告ってやつなのかな?
私になら勝てるって、
そう思ってのことなのかな?
そんな事ないよ!
そんなふうに頭回ってないと思う。
っていうかそんな子じゃないって!
貴方があの女を庇うような発言をする度に。
どこでどう間違ったのか思い出せなくて苦しくなる。
だって私の記憶の中の貴方はあの女をバカにしていて。
体型とかも笑っていて。
仕事できなくて困るって愚痴まで言っていて。
私はそれを疑いもしていなかったのに。
今の貴方はあの女を「あの子」なんて呼んでいて。
こんな状況なのにあの女の弁明までして。
いつの間にこんなに私たちの間に。
あの女が侵略して来ていたんだろうって。
考えたけど。
分からないや。
分かりたくもない。
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