復讐計画書 変化4

手術は局所麻酔で行われた。
細胞を少し取るだけなので、そんなに大袈裟なものではないと思っていたけれど。
いろいろな注意事項を読まされて、リスクを説明されて、同意書にサインする頃には。
ちょっと手が震えてしまったし、手術の日には夫の同伴が必要だった。
麻酔はものすごく痛くて、手術は機械の音がすごく大きく感じた。
私からは何も見えないようになっていたけれど、
時折大きな声で名前を呼ばれた。
手術中に意識を失う人もいるみたい。
細胞を取った後は血管をギュッと握られている感じがした。
麻酔をしているから感じるわけはないのだけれど、何というか、イメージかな?
血が出て来ないように圧迫してるってお医者さんは言っていた。
そして、これから主治医はこの耳鼻咽喉科の先生になるみたい。
大病院は大変だな。
麻酔でボーっとしているせいか、
どこか他人事のように新しい主治医の話を聞いた。

縫合して、ドレッシングシートを貼って。
しばらく安静ということで部屋に戻った。
幸い私は歩けたし、とりあえずは大丈夫そうだった。
夫は説明のために別室に呼ばれてしまったし、ひとまず寝よう。

採血が苦手で、健康診断ではベッドに寝て取ってもらっていた。
学生時代は貧血をおこして倒れたこともある。
針や血液を見るのが苦手で、大人になってもあれだけは慣れない。
そんな私が採血どころか身体にメスを入れて縫合することになるなんて。
そして今、絶対安静でベッドに横になることになるなんて。
人生わからないものだな、と思った。

そして、夫とのことも考えた。
とりあえず、離婚はしない。
浮気されたのはショックだったけれど。
きっと、ずっと忘れられないけれど。
結局私は、夫との思い出を手放せなさそうだし。
今この状況で、夫がいなくなったら、私の人生は道を踏み外すだろう。
年老いた両親は頼れないし、何より大騒ぎしそうで病気のことも話していない。
私の仕事は在宅でもできるけれど、今後の結果しだいではそれも難しくなるかもしれない。
夫は私と別れたくないみたいだし、
私も夫といる方がメリットが多い。
愛情はある。
けれども打算もある。
夫のことは愛していたけれど、
今も愛しているのかはわからない。
まだそこまで考えられないから。



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