復讐計画書 再会2

「立派になったね」
素直にそう思う。
あどけなさの残る高校時代を知っているせいか、
社会に揉まれて立派になった教え子を見ると感慨深い。
人と接するのが苦手だから研究職がいい!なんて駄々をこねることもあったけれど。
ちゃんとお医者さんになったんだからすごいと思う。

「センセイはちょっと複雑そうだね」
痛いところを突かれた。
苗字を見て、私が結婚していることは分かっているだろうけれど。
ここ数日間のゴタゴタからも、良くない状況は想像できるだろう。
元教え子に話す事ではないと思いつつ、誰にも相談出来ずに鬱々としていた気持ちを。
誰かに吐き出したくてたまらない。
それをグッとこらえる。

「うーん、まぁ、あんまり楽しい状況じゃないかもね?」
詳しく説明なんてしなくても、状況を見れば大体想像がつくだろう。
私もあまり口に出したくない。
頭の中で言葉や状況を反芻するだけでなく、実際に声に出してしまうと。
より深く記憶に刻み込まれるのではないかと怖くなるから。

「ねぇ、センセイ。俺と遊ぼうよ」
…?
突然の提案に疑問符しか浮かばない。
「センセイの旦那さんさ、センセイを裏切ったんでしょ?だったらやり返そうよ、俺と遊ぼう」
この子は何を言っているのだろう。
もしかして、不倫のお誘い?
いやいやいや、それはダメでしょ、絶対ダメ。
というか、私ったら何を本気にしているのかしら。
歳上なのに恥ずかしい。
きっと私を励まそうと、冗談で言っているだけ。
本気にするなんて、やっぱり弱っているんだな、私も。

必死で平静を取り繕う。

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