復讐計画書 あの子と私5

写真を撮る時に目を見開く女は嫌いだ。
それは君の本当の顔じゃないよと言ってやりたくなる。
写真の撮り方でスタイルが良く見えるとか、化粧の仕方で綺麗に見えるのは納得がいく。
けれど加工アプリで着飾った自分を、さも本物のように見せびらかすのは低レベルな人間のする事だと思うし。
そういう女をハベらして喜んでいる男は正真正銘のバカか一部の道楽金持ちオヤジだと思う。

俺はセンセイの飾らないところが好きだ。
見てくれがそれなりに良い方なのに、
自分を「それ以上」に見せようとしないところが好き。
それはある程度の自己肯定感がある証だと思うし、
つまりはそれなりに安定した良いご家庭で育って来たのだと思う。

俺はセンセイに自分の事をもっと知ってもらいたいけれど、
真っ向からそう言ったところでセンセイは壁を作ってしまうだろう。
だから俺のいる世界にセンセイを取り込みたかった。
さすがに今から医者ってわけにもいかないし、薬剤師も難しい。
だけど医療事務なら未経験でも採用されるし、センセイは努力するタイプだから資格も取れそうだと思う。

センセイにとって俺はあくまでも教え子で、
恋愛対象とか、そういうのじゃないのだろう。
だけどそれはセンセイの中の俺が大学生で止まっているからで、
今の俺を知らないっていうのはフェアじゃない。
大人になって、社会に出て。
歳は下だけど俺だって立派に社会に揉まれている。
あの時は人生経験が足りなくてあんな奴に負けたけれど、
今なら同じ土俵に立てる。
それで、冷静になってセンセイに考えて欲しい。
センセイにとって必要なのは、
今でもあの男なのか、それとも俺なのか。

これは誰のため?
センセイのため?
ともするとすぐに過去の思い出につられてしまう、俺のため?
考えても答えが出ないのならまず行動するべきだ。
俺は医療事務の資料をまとめたファイルを抱えてセンセイの病室に向かう。
せっかくなのだから主治医という立場を利用させてもらう。
センセイにとっての可愛い教え子はもうとっくに大人なのに。
センセイはまだ、気付いてくれない。

ま、そういうところが良いんだけどね。
俺も報われないよね。

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