あたしは誰にも愛されてなかったんだ。
母親は堕ろせないから産んだだけ。
父親はあたしを捨てたくて。
妹には煙たがられる。
こんなふうになったのはあたしだけのせいではないはずなのに。
あたしに寄り添ってくれる人は誰もいない。
考えよう。
とりあえず今日病院で言われた週数と近い頃にヤッた、
まだ子種が生き生きしてそうな男を必死に思い出す。
托卵できそうなやつ…。
アプリをくまなく見ていると、
一人見つけた。
コイツだ!
顔は微妙、アッチも微妙。
だけどコイツはあたしのことを無下には扱わなかった。
金をくれるオヤジたちもまぁ優しくはしてくれたけど。
でも年齢的に既婚者が多いから、托卵は難しいだろう。
コイツは30代って言ってたし、だらしない格好だったからたぶん独身。
…たぶん。
とりあえずコイツに連絡をしてみる。
定期の関係じゃないから可能性は低いけど。
だけどそれでもその可能性に賭けないと。
…これはお腹の子への愛情なのか?
堕ろすのが面倒だからなのか?
あんな奴でも母親になれたんだからあたしでもって憎しみなのか?
今考えてもわからない。
何度考えても答えが出ない。
というか、考えられるだけの知識や忍耐なんて、今までの人生で教えられてこなかった。
父親はあたしには無関心。
母親は色狂い。
学校の先生からは腫れ物扱い。
バレエでは厄介者。
周りの大人たちはあたしになんて向き合ってくれなかった。
何も教えてくれなかった。
それって全部あたしが悪いの?
クソみたいな人生。
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